歯の構造について

ここまで、むし歯について説明してきましたが、これより、むし歯の進行のしかたについて、説明していこうと思います。

.

すでにご説明している通り、むし歯は、歯の表面のミュータンス菌と糖分により産生される酸によって、歯質が脱灰されることにより、歯質が崩壊し、穴が開いていくことにより進行していきます。つまり、歯の表面から穴が開いて、穴は歯の中へと深くなっていきます。

.

その進行のしかたを説明するにあたり、まずは歯の構造について説明をします。

.

上の図は歯の構造を示しています。

.

歯は大きく分けて歯冠と歯根に分けられます。歯冠は正常な状態で、歯茎より上にある部分で、お口の中に見えている部分です。一方、歯根は歯茎の中に隠れている部分で、歯根の周りには歯槽骨と言われる骨があり、歯を支えている部分です。

.

歯冠部分は、表面から中心部分に向かって、エナメル質、象牙質、歯髄と、層のようになっています。

.

最も表面にあるエナメル質は、厚さが2-3㎜あります。エナメル質は、皮膚や爪などと同じように、体の表面を覆う組織の一部で、歯の表面を覆い、皮膚と同じように外部からの刺激、外部からの有害物質、細菌などの感染から体を守ってくれる役割があるのと同時に、体の中で最も硬いい組織であり、食べ物をかみ砕くのに役立っています。エナメル質は、カルシウムやリン酸などで出来ているハイドロキシアパタイトという硬い組織からできており、99%は無機質です。爪や髪の毛と同じように、感覚を感じたり伝える組織は含まれていないので、爪や髪の毛を切っても痛くないように、削られたり傷つけられたりしても痛みは感じません。

.

エナメル質の内側には象牙質と呼ばれる組織があり、エナメル質とは違って、筋肉など体の中身にある組織の仲間です。約70%がハイドロキシアパタイトなどの無機質で、残りはコラーゲンなどの軟組織でできています。エナメル質とは異なり、弾力性や柔軟性をもつので、エナメル質の衝撃などによる破折を防ぐことができます。

.

象牙質のさらに内側、歯の中心部分には、歯髄と呼ばれる組織があり、よく“歯の中の神経”と言われている部分ですが、実際には神経だけではなく、血管や結合組織などもあります。体の中の神経は、様々な感覚を脳に伝えますが、歯髄の神経は痛みを伝える神経であり、様々な刺激は痛みとして伝わります。冷たいものを食べてしみたりするのも、冷たい感覚が伝わっているのではなく、痛みとして伝わっています。また、血管により栄養が運ばれたりしています。

.

象牙質と歯髄は歯根部分まで続いています。歯根の先端部分には、根尖孔という穴が開いており、ここを歯髄の神経や血管が通っています。

.

歯根の周囲は歯槽骨という骨に囲まれており、歯槽骨が歯を支えていますが、直接歯と骨がくっついているのではなく、歯根膜とよばれる組織によってつながっています。歯根膜は、繊維のようなものからなる組織で、その繊維が骨と象牙質表面にあるセメント質という組織とをつないています。歯根膜は弾力性のある組織で、歯にかかる力を感じたり、クッションの役割をはたしています。歯に力を加えたときに、正常な状態でも少し動くのは、この歯根膜の弾力性によるものです。

.

歯槽骨の表面は、歯肉という組織に覆われています。いわゆる“歯ぐき”と呼ばれる部分です。歯肉と歯との接合部分は溝のようになっており、歯肉溝(しにくこう)と呼ばれます。正常な状態では、歯肉表面の上皮とエナメル質はつながっており、細菌などが体の中に入ってこないようになっています。

.

今回は、歯の構造について説明しましたが、次回は、これをふまえて、むし歯の進行によりどのようなことが起きるのかを説明していこうと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA