むし歯について2(どうしてむし歯ができるのか?)

今回は、むし歯がどうしてできるのかについて、少し詳しく説明したいと思います。

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“どうしてむし歯ができるのか?”

このことを考えることには、とても重要な意義があります。

むし歯は、歯の病気の代表的なものですが、当院では、むし歯を“治療”することよりも、“予防”することの方が重要だと考えています。

病気の“予防”を考える上で、その原因、つまり“どうしてむし歯ができるのか?”が分かれば、その原因を取り除くことで、その病気の“予防”に繋げることができます。

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“どうしてむし歯ができるのか?”

専門的な知識の無い方にたずねた時に多く聞かれる回答は、

「食べた後、歯を磨かないから」

「おやつなど、甘いものをたくさん食べているから」

ではないかと思います。

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では、どうして

“食べた後、歯を磨かない”とむし歯になるのでしょう?

どうして

“おやつなど、甘いものをたくさん食べている”とむし歯になるのでしょう?

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“食べた後、歯を磨く”のは、磨いて何をきれいに取り除いているのでしょうか?

これもたずねてみると、“食べかす”と答えられる方が少なくありません。

“食べかす”は、歯にとってどのような悪影響を与えているのでしょうか?

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“甘いものをたくさん食べること”は、歯にとってどのような悪影響を与えているのでしょうか?

甘いものの“食べかす”が歯の周りにこびりついているからでしょうか?

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これらの答えは、むし歯がどのようにしてできるのか、を少し詳しく考えていくと分かってくるかと思います。

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古くから考えられているむし歯が発生する要因として、“細菌”、“糖分”、“歯の質”があります。これらに加えて“時間”も要因の一つとして考えられることもあります。

歯の表面にいる“細菌”が、その周囲にある“糖分”を分解して酸を産生し、その酸により歯が溶かされて穴が開いてしまうということです。同じ条件でも、“歯の質”が強いか弱いかによってむし歯になるかどうかも変わってきます。また、酸に晒される“時間”が長ければむし歯になるリスクは高くなります。

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ですので、むし歯を予防するためには、これらの3つの要素を改善すればよいことになります。つまり、歯の表面にある“細菌”を取り除き、“細菌”への“糖分”の供給を減らし、“歯の質”を強くする、これらのことでむし歯になるリスクを減らすことができます。

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前半にお話した、“食べた後、歯を磨かない”とむし歯になるのは、“食べかす”だけではなく、歯の表面に酸を作る“細菌”が長い時間存在するためであり、特に食べた後は、糖分も多く供給されているので、むし歯のリスクは高くなります。

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また、“甘いものをたくさん食べること”は、その量よりも“時間”が重要で、たくさん食べることは、それだけ長い“時間”、“細菌”に“糖分”が供給され、多くの酸が長時間、歯の表面に作用することになります。

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“どうしてむし歯ができるのか”について、一般に考えられている“歯を磨く”ことと“甘いもの”のことについて、説明しましたが、他にも“歯の質”もむし歯の成り立ちとむし歯の予防には大きく関与しています。

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またの機会に、むし歯の成り立ちやむし歯の予防についても、もう少し詳しく説明したいと思います。

むし歯について01(“むし歯”とCO)

歯の病気の代表的なものの一つに、“むし歯”があります。

今回は“むし歯”について、少し詳しく書いてみます。

 

 

一般的に言われている“むし歯”ですが“虫歯”とも書きます。どうして“虫”なのか語源はわかりませんが、虫に食われたように穴が開くからなのでしょうか、もしくは、かつては虫が原因で穴が開くとも考えられていたこともあるようで、それで“虫”歯なのでしょうか?ここでは“むし歯”と書きます。

 

一般的な言葉は“むし歯”ですが、専門的には“齲蝕(う蝕、うしょく)”と言い、う蝕になった歯を“齲歯(う歯、うし)”と言います。英語では“Dental Caries”、もしくは単に“Caries”、もしくは、“Cavities”や“Tooth decay”とも言います。“Caries”の頭文字をとって、 “C”を略号として使います。

 

むし歯は、その進行度により、C1からC4に分類されますが、さらにCOという分類もあります。C1よりも初期の段階なので“C0(シーゼロ)”のようにも見えますが、“CO(シーオー)”です。Questionable Caries under Observationの略号で、日本語に訳すと“要観察歯”となります。定義としては、「主として視診にてう窩は認められないが、う蝕の初期症状(病変)を疑わしめる所見を有するもの。」(日本学校歯科医会HPより引用)で、つまり、目で見て診査する限りではむし歯の穴は見られないが、表面や歯の溝部分が白くにごっていたり、茶色く変色していたりする状態ということです。この状態は再石灰化(別の機会に詳しく説明します)により、むし歯ではない状態に回復させることができるので、治療の対象ではなく、適切な指導や処置を行ないつつ、経過を観察していきます。“要観察歯”ですが、観察だけしていれば良いのではなく、適切な指導や処置をしないと、C1へと進行してしまうリスクは高いと考えられます。

 

また、学校などの集団検診ではCOの他に“CO-S(シーオーエス)”もしくは“CO(要精検)”という判定もあります。学校などの集団検診では、目で見て診査をしてむし歯の穴が確認できるものが“C”と判定する、という基準があるので、特に歯と歯の間がむし歯になっている場合などは、色の変化などにより、むし歯がある可能性が高そうだとしても、目で見える穴は確認できなければ、COという判定になってしまいます。しかし、先に書いたように、COとはごく初期のむし歯のことであり、治療は必要ないため、次の検診まで放置される可能性があります。そこで、CO-S(CO(要精検))という判定を使って、歯科医院でのX線写真などでの精密検査を受けるよう勧めるようにしたものです。したがって、CO-Sと判定する場合には、明らかに歯と歯の間にむし歯がありそうだけど、穴が見えないからCの判定ができない場合と、もしかしたら治療の必要の無いCOかもしれないけど、Cかもしれないという場合とがあるかと思います。CO-Sの判定があれば必ず歯科受診をしたほうが良いと思います。

 

 

今回は、むし歯の進行度による分類について、特にCOとCO-Sについて書きました。後日、またむし歯について書いてみようと思います。