むし歯について11(お口の中の発育について)

前回と前々回で、6歳以上の人と6歳以下の人のむし歯リスクの違いについて紹介しました。大きく違う点は、6歳以下の人は、保護者(日常の養育を主に行っていいる人)の方の影響が大きいということでした。

6歳を一つの境界線として、むし歯のリスクや、むし歯の予防の考え方が違ってくるということを説明しました。しかし、6歳になったからと言って、そのお子様が、急激に発育するわけではありません。

6歳でのお子様の変化としては、6歳になると、それまで幼稚園、保育園、もしくはご家庭で生活していましたが、小学鈎へ入学し、学校で教育を受けるようになります。それだけ、精神的にも成長しているということですが、当然のことながら、まだまだ子供であり、本人のみでの、お口の中の管理は不十分であり、保護者の方の管理が必要な年齢です。

通常は、むし歯になった場合、むし歯が深くない場合は、むし歯の部分を削り取って、その部分を人工的な材料によって、歯の形態や機能を回復させるように、治療を行います。しかしながら、幼児の場合は、精神的にも肉体的にも未発達のため、例えば、治療に対する恐怖心などで怖がっったり、痛みや治療の刺激を受け入れることができず、治療が十分に行えない場合があります。

昭和のころと比較して、最近は、幼児のむし歯は大きく減少してきていますが、それでも、むし歯になるお子さんはいます。早ければ、2歳くらいからむし歯が見つかることもあります。簡単に言うと、乳歯は前歯から生え始めて、最後に一番奥、手前から5番目の乳歯が生えそろうのが、概ね2歳半くらいです。

むし歯を患うお子さんは、3歳くらいから見られます。

3歳のお子様だと、まだ未発達なので、十分に治療を受けられるのは、2-3割程度で、4歳だと5割くらい、5歳になると、7-8割のお子様が十分に治療を受けられるようになります。

十分に治療を受けられるお子様は、むし歯の部分を削って、人工的な詰め物を詰める治療を行いますが、治療を受け入れてくれないお子様は、受け入れてもらえる程度によって、むし歯の進行止めのお薬をつけて様子を見ていったり、仮詰めで様子を見ていったりします。

また、乳歯は歯の表面から歯の神経までの歯の厚みが薄いので、少しむし歯が進行すると、すぐに歯の神経に近づいてしまいます。そのようなむし歯で、むし歯部分を完全に取り除くと、歯の神経が露出してしまうことがあり、そうなると、歯の神経を取り除く処置を行わないといけなくなります。神経を取り除く処置には、麻酔が必要であり、治療の複雑さという点でも、お子様にとってはハードルは高くなります。したがって、神経を取り除く処置を避けるためにも、一時的に仮詰めで様子を見ていくこともあります。

6歳になると、ほとんどのお子様が、治療を受け入れてくれるようになります。

むし歯予防についても、5歳以下のお子様の場合は、保護者の方へのアプローチの部分が大きかったのが、本人へのアプローチへと変わってきます。

しかしながら、先にも書いたように、まだまだお口の中の管理は不十分であり、保護者の方の管理(仕上げ磨き)が必要です。

では、いつまで仕上げ磨きが必要か?

明確な答えはありません。8歳くらいと言われていたり、10歳くらいと言われていたりします。

一つの目安としては、奥歯の乳歯から永久歯への生え変わりの時期だと考えます。一般的には10歳ごろから12歳ごろまでにはすべての歯が永久歯に生え変わります。このころには、お子様も肉体的にも精神的にもさらに発達する時期ですので、これくらいのころまでには、仕上げ磨きは卒業してよいと思います。

以前にも書きましたが、むし歯経験のあるお子様は、むし歯リスクは高いので、この時期を過ぎても、むし歯リスクは高いので、引き続き注意はしていかないといけません。逆にむし歯経験のないお子様は、むし歯リスクは低いですが、小学校を卒業し、中学生になると、試験勉強や部活などで、生活リズムや食生活が変化し、むし歯リスクが高くなることもありますので、その点は注意が必要です。

定期検診や歯科医院でのメンテナンスなどを利用し、虫歯予防を続けていくことは大切だと思います。

今回は、お子様の成長に伴うお口の変化について説明しました。