むし歯について7(むし歯の成り立ち、脱灰と再石灰化、むし歯菌の感染)

これまで、むし歯の成り立ちについて、歯の表面にむし歯菌がいて、糖分が存在すると、むし歯菌は糖分から酸を産生して、歯の中のカルシウムやリンなどのミネラル分が歯から溶け出す“脱灰”を引き起こすと説明してきました。

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むし歯菌として知られている代表的なものに、“ミュータンス菌”があります。“ミュータンス菌”は、お口の中にある様々なばい菌の中でも、むし歯にとても関係しているばい菌です。

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これまでも説明しているように、むし歯菌のミュータンス菌は、糖分から酸を産生するのですが、もう少し詳しく説明していきます。

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ミュータンス菌がどのようにむし歯に関与しているかと言うと、

1.不溶性グルカンの産生

糖分を材料として、菌のまわりに、ネバネバした不溶性グルカンというものを作り出します。不溶性グルカンによって、歯の表面に付着するとともに、他のばい菌と塊を形成します。 このばい菌の塊がプラークです。

2.酸の産生

糖分を材料として酸を産生し、歯を溶かします。

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では、このミュータンス菌は、全ての人のお口の中に存在するのかと言うと、そうではありません。ミュータンス菌を持っている人と、持っていない人がいます。ミュータンス菌を持っている人は、糖分がお口の中に入ると、歯の表面で酸が産生されるので、むし歯になりやすい人です。反対に、ミュータンス菌を持っていない人は、糖分があっても、酸の産生は少ないので、むし歯にはなりにくい人です。

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ミュータンス菌は、産まれた時からお口の中にいるのではなく、ある時から“感染”して、お口の中に住み着いてしまうものなのです。

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いつごろから、“感染”するのかというと、歯が生えてきた頃から感染が始まります。そして、生後19ヶ月~31ヶ月頃が、最も感染しやすい時期で、この時期に“感染の窓”が開くと表現されます。

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この時期は、卒乳して離乳食が始まった後、乳歯の奥歯が生えてくる時期から、乳歯が奥歯まで生えそろう時期です。

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お口の中に入ってくる食べ物は、授乳期の母乳や人工乳から、離乳食の初期は、舌でつぶすような食べ物だったのが、奥歯で咬むような食べ物へ変化していく時期です。

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そのような食べ物の変化や、歯が生えそろうことによる、お口の中の環境の変化によって、ミュータンス菌が感染しやすい状態になるのだと思います。

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ミュータンス菌は、一旦感染してしまうと、取り除くことはほぼ不可能です。ですので、感染させないように気をつけることが、むし歯を予防する上では、とても重要です。

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今回は、むし歯の原因菌である“ミュータンス菌”は、“感染”するものであり、感染してしまうとむし歯になりやすくなること、幼児期に感染しやすい時期があること、について説明しました。

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次回は、“ミュータンス菌”の“感染”について、もう少し詳しく説明していきます。